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間違った相続放棄

事業を経営していた父が亡くなりました。母は以前に亡くなっており、2人兄弟の兄は父の後継者として働いています。父は銀行から融資を受けて事業を拡大しようとしていましたが、二男の私はサラリーマンの方が気楽でいいと思っています。兄が父の事業を受け継ぐには「遺産分割協議書」という書類を作る方法が簡単だと聞きました。正式な相続放棄は面倒なので、こんな方法でも大丈夫ですよね?

遺産分割協議では、特定の相続人の取得分をゼロとし、1人の相続人に遺産を集中するような分割の合意をすることができます。こうした方法は、「事実上の相続放棄」とよばれ、実際に行われることがあります。

 

しかし「事実上の相続放棄」では、取得分をゼロとした相続人であっても、借金などマイナスの財産を受け継ぐことになります。つまり、亡くなった方(被相続人)に銀行からの借入れがある場合には、「事実上の相続放棄」をしても、借金を返済しなければならなくなるのです。

 

マイナス財産の相続を避けるには、正式な相続放棄を家庭裁判所で行う必要があります。正式な相続放棄は、原則として、法律で定められた期間内に行わなければなりません。円満に事業を承継してご家族が安心して暮らすためにも、ぜひお早めに弁護士にご相談ください。

事実上の相続放棄とは

相続人は、家庭裁判所で相続放棄の手続きをしなくても、自身が相続した財産・権利を放棄することができます。特定の相続人の取得分をゼロとし、1人の相続人に遺産を集中させるような合意をすることを、「事実上の相続放棄」といいます。

 

例えば、遺産分割の話合いで、自宅や家業の工場を、相続人のうち1人の単独所有とすることができます。

預貯金や不動産などプラスの財産については、相続人が自身で受け継がないことにするのは自由です。しかし、借金などのマイナス財産については、相続人が勝手に受け継がないことにすると、債権者が弁済を受けられなくなる可能性があります。このため、「事実上の相続放棄」をした相続人は、債権者の同意がない限り、借金などのマイナス財産を受け継ぐことになるのです。

 

これに対し、正式な相続放棄では、マイナス財産をすべて相続しないようにすることができます。正式な相続放棄では、法律で定められた期間や方式に従わなければなりません。

事実上の相続放棄の方法

事実上の相続放棄には、次のような方法があります。

(1)遺産分割による方法

特定の相続人の取得分をゼロとし、1人の相続人が財産を取得する「遺産分割協議書」を作成します。

※こちらもご覧ください(遺産分割協議のページ)

(2)特別受益を受けたことにする方法

特定の相続人が、十分な特別受益を受けているとして、自己の相続分がゼロであるという証明書(この証明書は「特別受益証明書」「相続分なきことの証明書」などとよばれます。)を作成します。

※こちらもご覧ください(特別受益のページ)

(3)相続分の譲渡・放棄による方法

ア 相続分の譲渡

相続分の譲渡とは、プラス財産もマイナス財産も含めた相続財産全体に対する割合(相続分)をまとめて相続人または第三者に譲渡することをいいます。

相続分を譲り受けた人は、プラス財産もマイナス財産も受け継ぐことになります。相続分の譲渡では、債権者を害することを防ぐため、相続分を譲り渡した相続人も、マイナス財産を負担することになります。つまり債権者は、相続分を譲り受けた人にも、相続分を譲り渡した相続人にも、弁済を請求することができるのです。

 

イ 相続分の放棄

相続分の放棄とは、プラスの相続財産の全体に対する割合(相続分)を放棄することをいいます。相続分の放棄により、他の相続人の相続分は、プラス財産のみが増えることになります。そして、相続分を放棄した相続人は、マイナス財産を負担したままになります。

 

ウ 相続分の譲渡・放棄による「事実上の相続放棄」

相続分の譲渡の場合は「相続分譲渡証書」等、相続分の放棄の場合は「相続分放棄証書」等を作成します。

事実上の相続放棄のメリット・デメリット

事実上の相続放棄は、家庭裁判所が関与することなく、簡易・柔軟に行うことができます。そして、正式な相続放棄ができる期間が過ぎてしまった場合でも、事実上の相続放棄を行うことはできます。

しかし、事実上の相続放棄では、借金などのマイナス財産を放棄することはできませんので、特に注意が必要です。

 

正式な相続放棄は、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所で手続を行う必要があります。正式な相続放棄には、必要書類の取寄せなどが必要ですが、借金などのマイナス財産をすべて相続しないようにすることができるという大きなメリットがあるのです。

※こちらもご覧ください(相続放棄と事実上の相続放棄)

【動画でわかる!】間違った相続放棄について

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