遺産分割をする際に、法定相続人(遺産を受け取る立場の人)の中に、被相続人(亡くなった人)から生前贈与や遺贈を受けている人がいる場合には、「特別受益」として、その人が受け取る遺産が減額されるケースがあります(詳しくはこちらのページでご説明しています)。
あなたが被相続人から受け取った財産が「特別受益」であると判断されると、あなたが最終的に受け取れる遺産の額は、他の相続人に比べて少なくなってしまうという可能性があります。他の相続人からすると、生前にお金をもらっているのだから当たり前だ、という話になりますし、相続人同士の平等を意図しての制度なので当然のことなのですが、あなたにとっては、できることなら「特別受益でない」と判断された方が都合がいい、ということになりそうです。
そうすると、何が「特別受益」にあたり、何がこれにあたらないか、の判断が重要となってきますよね。
まず、遺贈の場合には、すべて「特別受益」にあたるとされますので、その名目がどのようなものであっても関係なく、修正の対象となります。
これに対して、被相続人の生前に受けた贈与の場合には、それぞれの贈与が何の目的でなされたものなのか、を確認していく必要があります。
そして、通常、以下のものであれば、特別受益にあたるとされます。
(1)婚姻又は養子縁組のための贈与
具体的には、婚姻の際の持参金・結納金など。
(2)生計の資本としての贈与
具体的には、住宅の購入資金、営業資金など。
上記のことは、【特別受益】のページでお伝えしたとおりです。
それでは、子の学費については、(2)生計の資本としての贈与にあたるでしょうか?
これについては、学費の額や、親の収入などにもよりますが、通常、高校までの学費は、これが「特別受益」とされた例はほとんどありません。なぜなら、高校卒業までの教育は親の義務であると考えられるからです。
また、大学以上の教育にかかる学費も、両親の経済状況からみて通常の扶養義務の範囲内と考えられる場合は、「特別受益」とされないでしょう。
ただし、たとえば、3人兄弟の場合で、長男と次男は高校卒業後すぐに家業を手伝い始めたのに、三男は私立大学に通った、というような場合は、三男の学費は「特別受益」であると判断される可能性があります。
もっとも、親の収入等からみて、子供たちを大学に通わせることが通常の扶養の範囲内であると認められる場合には、兄弟のうち一人だけが大学に通ったという事情も、「特別受益」にあたるとは限らないでしょう。