Q.株式会社にして経営してきた商店を長男に譲るため遺言をしようと考えています。住宅は店舗と兼用ですし、現金を会社に貸していますので、個人の財産がどれぐらいなのかわかりません。相続を考えるために何から始めたらいいでしょうか?
A.ある方が亡くなった時に、その人の財産に属した一切の権利義務が「相続財産」となります。
遺言や事業承継を考える前に、「相続財産」のリストを作ると、誰に何をどれだけ引き継ぐかということがはっきりしてきます。
また、「相続財産」を調べてみると、祖先の代から引き継いだ不動産で登記名義人が先代のままとなっていたり、個人の住宅に会社の借入れのため抵当権が設定されていたり、不動産の権利関係が複雑になっている場合があります。
遺言や事業承継についてお考えの場合や、「相続財産」についてわからないこと出てきた場合は相続の専門家である弁護士にご相談ください。
1 「相続財産」とは
「相続財産」とは、ある方が亡くなった時に、その人の財産に属した一切の権利義務のことをいいます。現金・預金、土地・建物、自動車といったプラスの財産はもちろん、借金などマイナスの財産も「相続財産」となります。
遺言や事業承継を考える場合、「相続財産」がどれほどあるのかわからなければ、誰に何をどれだけ引き継がせるかわかりませんし、相続税などの対策を考えることもできません。
そこで、遺言や事業承継を考える前に、「相続財産」のリストを作ると、誰に何をどれだけ引き継ぐかということがはっきりしてきます。
※「相続の対象となる財産」の詳細ページはこちら(http://www.okuda-souzoku.com/相続のしくみ/相続の対象となる財産/)
2 「相続財産」のリスト
「相続財産」のリストは、決まった様式はありませんが、例えば、裁判所のホームページなどで公開されている遺産目録の書式などを利用すれば間違いないでしょう(検索サイトで「裁判所 遺産目録」などのキーワードを用いて探すことができます)。
現金・預金は、預金通帳などを調べることができますから、「相続財産」がいくらになるのかが比較的わかりやすいといえます。そして、他人に貸しているお金も相続財産に含まれますので注意しましょう。例えば、会社の経営者が会社に貸しているお金(会社にとっての役員借入金)は、経営者個人の財産となります。
また、土地・建物といった不動産の価値については、様々な評価方法がありますが、まずは固定資産税の支払通知書に記載された評価額を参考にするのが簡単な方法です。そのような通知がない場合でも、亡くなった方の相続人であれば、市町村役場などで固定資産評価証明書をもらうことで、評価額を確認することができます。
名寄帳による不動産の調査 そもそも、亡くなった方がどこにどのような不動産を持っているのか分からない、という場合もあります。 そのような場合には、亡くなった方の相続人であれば、市町村役場などで亡くなった方の「名寄帳」を発行してもらう方法があります。「名寄帳」には、亡くなった方が当該市町村内に所有する不動産の一覧が載っています。 そのため、亡くなった方が不動産を持っている可能性のある市町村さえ当たりをつければ、その方の不動産の全体像を把握することができます。 |
このほか、生命保険金などについても、保険の種類や受取人などによって相続財産に含まれる可能性もありますので、忘れずにリストに挙げてください。また、相続財産に含まれない生命保険金であっても、「みなし相続財産」として相続税の課税対象には含まれます。
※「相続税と生命保険」の詳細ページはこちら(http://www.okuda-souzoku.com/相続放棄/相続税と生命保険/)
表1 「相続財産」のリスト(例)
種類 |
内容 |
面積・数量 |
評価額 |
備考 |
土地 |
××市××町1-1 |
200m2 |
3000万円 |
店舗・住宅用 |
××市××町1-2 |
100m2 |
1500万円 |
駐車場 |
|
建物 |
××市××町1-1 |
200m2 |
350万円 |
店舗併用住宅 |
預金 |
○○銀行○○支店 |
普通預金 |
1200万円 |
|
積極財産 計 |
6050万円 |
|||
未払固定資産税 |
-50万円 |
福岡市 |
||
消極財産 計 |
-50万円 |
|||
合計 |
6000万円 |
3 「相続財産」のご相談
「相続財産」となる財産がいくらなのかを調べてみると、意外なことがわかることがあります。例えば、祖先の代から引き継いだ土地の登記名義人が先代のままとなっていることがあります。このような場合、先代の相続人間で共有となりますので、不動産を1人だけに引き継ぐためには先代の相続人となった方で協議をすることなどが必要となります。
また、中小企業の経営者の場合、個人の住宅に会社の借入れのため抵当権が設定されているなど、不動産の権利関係が複雑になっている場合がありますし、会社の株式の評価額がわからないことが多いといえます。
こうしたことから、弁護士に相談することによって、早期に問題を解決して財産を分けやすくすることができますし、ご意向に沿った「遺言」を作成することにより、相続についての紛争を予防することが期待できます。
当事務所は、「相続財産」を詳しく調べながら、誰に何をいくら受け継がせるかについて一緒に考えて参ります。
遺言や事業承継についてお考えになったり、「相続財産」についてわからないことが出てきたりした場合は、相続の専門家である当事務所にご相談ください。