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遺言執行者に選任されたらどうする?【相続】

1 はじめに

今回は、遺言執行者の職務についてお話をしたいと思います。

こちらの記事をご覧の方の中には、

「親から、『遺言であなたを遺言執行者にするから、しっかりやってくれ』と言われた」

「遺言書を開けてみたら、自分の名前が“遺言執行者”になっていた」

という方もいらっしゃるかもしれません。

実際、法律相談でも、

“そもそも遺言執行者って何?自分がやらないとダメなの?”

という疑問を持たれる方もいらっしゃいます。

今日の動画では、

指名されたときにまず何を考えるべきか、実際にどんな手続が必要なのか、分かりやすくお話ししていきます。

2 遺言執行者って何をする人?

まず最初に、「遺言執行者」とは、

遺言書に書かれた内容を実際に“実行する”役目の人

のことです。

 

例えば、

 不動産を誰かに相続させる

 預金を分ける

 財産を売って分配する

 寄付を行う

など、遺言に書かれていることを、きちんと形にして進めていく担当者です。

 

ポイントは、「相続人の代理人ではない」という点です。

遺言に書かれたことをそのまま実行する、独立した立場の人、ということになります。

 

3 指名されたけど、引き受けなきゃいけない?

結論から言うと、

引き受けるかどうかは自由です。

 

断ることもできますし、迷っている段階では無理に「引き受けます」と言う必要もありません。

 

引き受ける前に、ぜひ次のポイントを確認してください。

 

① 遺言書の内容が分かりやすいか

複雑な評価が必要だったり、不動産の売却が必要だったりすると負担が大きくなります。

 

② 相続人同士の関係性

相続人同士の対立が激しい場合、遺言執行者に対して不満が集中してしまったり、本来であれば独立した立場であるのに、間に挟まれてしまったりするケースもあります。

 

③ 財産や負債の内容

財産や負債の種類が多岐に渡る場合や、点在する場合などは、処理や調整も複雑になることがあります。

 

④ ご自身の余力との兼ね合い

単純なケースでも半年以上、複雑だと1年以上かかることもありえます。

 

以上のような点をふまえて、「自分では難しいかもしれない」と思ったら無理に引き受けなくて大丈夫です。逆に、「自分でやってしまった方が早く終わる」という場合は、引き受けていただいても良いかと思います。

 

4 引き受けると決めたら、まず最初にすること

では、「遺言執行者をやります」と引き受けた場合、何から始めるべきでしょうか。

序盤の手順は次の4つです。

 

① 遺言書をしっかり確認する

公正証書遺言であれば安心ですが、手書きの遺言の場合は「検認」という裁判所の手続きが必要です。

 

② 相続人・受遺者へ「就任の連絡」をする

次に、相続人・受遺者に対し、「遺言書に基づき、遺言執行者に就任しました」という通知を行います。

 

③ 財産調査

預金、不動産、保険、借金など、遺言書に書かれた内容を中心に、リストアップします。

探索的に調査する必要がある場合は、預金については銀行に照会し、不動産については役所で「名寄帳」を取得するなどしていただければ、ある程度網羅的に把握することができるかと思います。

 

④ 相続財産を管理する

遺言執行(遺言書に基づく遺産の分配)が完了するまでの間、不動産の固定資産税の立替えや、賃貸物件の家賃管理など、その遺産を維持するために必要な管理をします。

 

5 実際の「執行」はどんなことをするの?

遺言の内容に応じて、実際の手続きは変わります。

 

例えば、

 

●不動産を相続させる遺言

→ 登記の名義変更

 (※ 相続人の協力が得られない場合でも、執行者単独でできる場合があります。)

 

●預金を分配する遺言

→ 銀行で解約・払い戻しを受けた上で、受遺者に渡す

 

●財産を売って分ける(換価処分)

→ 不動産会社とのやり取り

→ 物件の売却

→ 売却代金を配分

 

など、遺産の種類・性質に即した分配を行います。

換価処分になると、専門家でなければかなり難易度が高いように思います。

 

6 遺言執行が終わったら

全ての手続が終わると、

・相続人への報告

・預かっていたお金の精算(遺言書で遺言執行者の報酬が定められている場合は、その精算も含む。)

・書類の返却

を行って、執行業務終了となります。

 

また、遺言書で、遺言執行者の報酬が定められていない場合は、相続財産から“相当額の報酬”を請求することができます

 

7 迷ったら、弁護士に相談してください

遺言執行者は、

法律的な責任が重く、手続も専門的です。

 

例えば、

・相続人が非協力

・財産がどこにあるか分からない

・不動産の売却に反対される

・銀行が書類不備で応じてくれない

・税金の管理

こうした問題は、一般の方が1人だけで対処するのは本当に大変です。

 

そのような場合は、遠慮なく弁護士にご相談ください。

遺言執行者としてどのような対応を行えば良いかという法的アドバイスはもちろん、遺言執行者の職務を“代理人として全部代わりにやってもらう”ことも可能です。

 

8 まとめ

以上、遺言執行者のお仕事についてご説明しました。

 

遺言執行者に指名されたと知ると、

 「自分が全部やらないといけないの?」

 「手続きが難しすぎる…」

と不安になるかと思いますが、引き受けるかどうかは自由です。

そして、引き受けられた場合も、必要に応じて弁護士にご相談いただくことで、安心して、淡々と進めていただければと思います。

 

「こんなこと聞いていいのかな…?」というような内容でも、遠慮なく専門家にご相談ください。

手続き全体の見通しを立てて、必要に応じて実務を丸ごと引き受けることもできます。

 

今回もご覧いただきありがとうございました。

 

執筆者紹介

弁護士 井上瑛子(いのうえ はなこ)

九州大学法学部卒

九州大学法科大学院修了

福岡県弁護士会所属

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