皆さんこんにちは。弁護士の井上です。
今日は遺言についてお話したいと思います。
皆さんは4月15日が「遺言の日」であることをご存知でしょうか。
弁護士はこれを遺言(いごん)と呼んだりしますが、今日は遺言の日にちなみ、遺言書の書き方と、亡くなられた方が生前、遺言書を残していて、それを受け取った場合、もしくは遺言書が亡くなられた後に出てきた場合の対応についてお話したいと思います 。
1.遺言書の書き方
こちらにサンプルを用意しました(初めて書いたのですが字が汚くてすみません)。
実はこの遺言書、2つ間違いがあり無効です。
どこが間違いかパッと見た感じお分かりになられるでしょうか?
それでは答え合わせに移りましょう。
まず1点目、実は【ワープロで記載しているところ】が間違いです。
民法上、自分で遺言書を書く場合、必ず全文が自筆でなければなりません。
つまり、自分の筆跡によるものでなければなりません。
なぜかというと、民法は、亡くなられた方の生前の御遺志というものを一番に尊重するのが原則のため、ワープロ等で書き込みがあった場合、本当にその人の意思によるものかということが疑われてしまうからです。
その他、テープレコーダーによる録音も同様の理由で無効になってしまいます。
但し、文章中に外国文字を使ったり、略字・速記文字を使うことは問題なく有効となります。
2つ目の間違いは、【署名の後ろに押印がないところ】になります。
遺言書は必ず自分の印鑑で押印がなされていないといけません。三文判や母印でも大丈夫です。
また下から2行目の文章に違和感を覚えられた方、とても鋭いと思います。
民法では、遺言書は必ず自分の氏名と作成した年月日というものを記載しないといけません。
年月日については「年」「月」「日」全て揃っていなければなりませんが、例えば『31歳の誕生日』など、こういった書き方であると一生の時間のうちにたった1日しかないことが明らかですので、年月日が特定できるものとして有効な記載となります。
2.遺言書の訂正の仕方
一度書いた遺言書を訂正変更したい場合は、『遺言者がその場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつその変更の場所に印を押さなければならない』というのは民法の書きぶりですが、なんのこっちゃか分からないかと思います。
こちらに書いておりますとおり、まずその変更したい場所に書き加えます。
もしくは削除される場合は、二重線を引かれると良いかと思います。
そしてその箇所に印鑑を押します。
その後、文章の一番下の方が望ましいかと思いますが、どこをどのように訂正したのかを明記した上で自分のサインをします。
これで有効な訂正変更がなされたものとして扱われます。
3.新しい遺言書が出てきたら
次に新しい遺言書が出てきました。
先ほどとどこが違うかというと、もともと私が事務所で持っていた私物を、所長の奥田貫介に贈る、相続させるといった文章が、奥田竜子に相続させるという趣旨の記載に変わりました。
また下の下線にもある通り、もともとは31歳の誕生日に書いた遺言書が、次は32歳に書かれているとのことです。
このように、矛盾した遺言書が出てきた場合は、矛盾する部分について後の遺言が優先されることになります。
つまり、31歳よりも32歳に書いた遺言書の方が新しいことになるわけですから、私の私物、(ここに書いてありますように)事務所内で所有保管していた書籍と、私物に関しましては奥田貫介ではなく、奥田竜子に相続させるということになります。
また気をつけなければならない点が1点あり、民法では15歳未満の方は遺言をすることができません。つまり、14歳になった人が遺言書を残しても、それは無効のものとして扱われるのでご注意ください。
4.遺言書を見つけたとき
これは自筆の遺言書、手書きの遺言書が見つかった、もしくは受け取った場合に限られるのですが、まず、遅れずに検認手続きというものをしなければなりません。
検認手続きは、具体的な手続きの流れについては省略いたしますが、基本的にその遺言書を家庭裁判所に持っていく必要があります。
また、絶対に気をつけなければならないのが、その遺言書について封かんがなされている場合、のり付けされている場合、絶対に開けてはいけません。
もし検認手続き以外の場所でこれを開封してしまった場合、5万円の過料に処される可能性すらあるのです。
もちろん、もともと封が開いていた場合か、もしくは封筒がなく便箋のままであったという場合は問題ありません。
今回ご説明したとおり、遺言書を自分で書く場合もありますが、他にも色々な手続きが遺言書の書き方としては用意されており、また、遺言書を受け取った側も複雑な手続き等が用意されているため、分からないことがありましたらいつでも弁護士にご相談いただけますと対応できるかと思います。
また、細かいことなどご不明な点がありましたら遠慮なくご相談下さいませ。
著者プロフィール
弁護士 井上 瑛子
司法修習70期 福岡県弁護士会所属
九州大学 法学部 卒
九州大学法科大学院 卒