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自筆証書遺言 民法968条 最もシンプルな遺言

こんにちは。弁護士の奥田です。

今日は「自筆証書遺言」。民法の968条というところに書いてある遺言。

これが最もシンプルな遺言ですので、意外と使い勝手がいいというところがありますから、これについて簡単に解説をしたいと思います。

民法にはどう書いてあるかというと、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び、氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」というふうに書いてあります。

自筆証書というすごく仰々しい言い方ですけれども、ノートに書くとか、場合によってはチラシの裏に書くとかということでも法律上は問題にならないということになっていますので、そういう”自筆”で書く遺言のことですね。

これを自筆証書によって遺言をするにはということになるんですけれども、大切なことは、まず遺言者が「自書」自分で書かないといけないということになっています。

パソコンとかスマホとかで入力するのは駄目だと。自分で書いてください。筆記具は何でもいいということになっています。極論すれば鉛筆でもいいわけですし、ボールペンでもいいし、立派なものじゃなくても全く構わないということになっています。大事なことは「自書」ですね。自分で書くということになります。

何を自分で書くかというと「全文」(全ての文書)を書く、それから「日付」、これを忘れないでくださいと。それから「氏名」、自分の名前ですね。これも自分で書くということ。

これらをした上で、最後にこれに「印」、印鑑を押さないといけないとこういうことになっています。この印というのは、別に実印じゃなくても何でもいいわけですね、。文判で全然構わないということになります。

 

例ですけれども、

「遺言書

全ての財産を長男一郎に相続させる。

令和6年10月5日

山田太郎」

これを自分で山田太郎さん(遺言する人)が書くということになります。全部、自分で書く。これが一番シンプルな遺言ですけれども、一番本当にシンプルな形はこういう遺言書も有効。最後に印を押して、これで基本的には有効になるということになります。

この日付については有名な過去の判例がありまして、『10月5日』というふうに書かないといけない。『10月吉日』というふうに書いたら、それでこの遺言書が無効になるという有名な判例があります。ちゃんと書いた日にちをここに何月何日までしっかり書くということが大切です。

最後に印鑑を押してくださいと、こういうことになります。もちろん訂正とかいろいろするのであれば、また細かいルールはあるんですけれども、今日は一番シンプルなところだけ。基本的にはこれで有効となります。

例えば、急いで遺言を書きたい時というのが、人生何があるかわかりませんから、そういう場合にですね、本当に命の危険が迫ったときには、民法には「死亡危急時遺言」とかいう別の方法もあるにはあるんですけれども、ただ、内容がこんな簡単であれば、このくらいのことっていうのは大概書けたりしますから、一つこの「自筆証書遺言」というものをまずトライしてみるというか、検討していただくというのがいいんじゃないかなと思います。

この自筆の遺言を書いたときにですね、一番問題になりがちな話は、後でこの遺言書が出てきたときに、「いやこれ、山田太郎さんじゃなくって、山田一郎が勝手に書いたんじゃないか?ちゃんと山田太郎さんが書いたんですか?」というところが一番問題になりうるところではあります。

それが公正証書の遺言と違うところで、公正証書の場合は、公証人がきちんと遺言する方の本人確認をしっかりしますから、替え玉が遺言したということはほとんどあり得ないわけですけれども、自筆だと誰でも書けるわけですので、この遺言書の例だと、「山田一郎が勝手に書いて山田っていう印を押したんじゃないか」と。実印じゃなくてもいいわけですからね。というふうなことで揉めがちです。

 

それに備えて、後で問題にならないために、今スマートフォンなどですぐに録画できますから、ご自身で書かれるときにはスマートフォンをどっかこの辺に置いといて自分で書いて、あるいは今から書きますというのを宣言した上で、最後また自分が書きましたっていう録画を残しておけば、その自筆性というか、作成者が誰なんだというところでは揉めない。

それから、これはどんな遺言書(例えば公正証書遺言)でも問題にはなるんですけれども、ちゃんと”判断能力”があったんですかと。高齢の方の場合にはそういう問題が後で出てくる可能性もありますから、そういうときには事前に簡単な診断書でも取っておかれて、一応遺言をする程度の判断能力はありますみたいな、そういった趣旨の診断書を書いていただいておくというのも、万全を期す場合にはいいのかなというふうに思います。

ですので、この自筆証書遺言ですね、今まで「作成者が誰か、本当にこの人の自筆なのか」というところで揉めることが結構あったので、そうするとやっぱりどうしても、自筆証書遺言はなかなか後で有効とされないんじゃないかという問題があったんですけれど、このスマホで録画できるっていうのは、後の紛争防止のためには十分な材料になりますし、そういった意味では自筆証書遺言というのは、今かなり使える状況になってきたのかなというふうに思います。

 

今日はこの最もシンプルな遺言「自筆証書遺言」についてお話をさせていただきました。

今日のお話は以上です。

 

筆者プロフィール

弁護士 奥田 貫介 

おくだ総合法律事務所 所長 

司法修習50期 福岡県弁護士会所属 

福岡県立修猷館高校卒 

京都大学法学部卒 

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