間口の狭い土地を「競売」で売却し、現金を分けるまで
弁護士の奥田です。
本日は、土地の共有物分割訴訟における「換価分割」の流れについて、全体像(といっても触りの部分になるかもしれませんが)をご紹介します。
例として、間口の狭い土地を競売で売却し、共有者が現金を受け取り、最終的に分けるまでをイメージしながらお話しします。
1. 事例の前提(共有関係の状況)
今回のモデルケースは次のような状況です。
依頼者は、間口の狭い土地について 1/6 の共有持分を持っていました。もともとは相続をきっかけに複数人の共有になった土地で、当初は 6人がそれぞれ1/6ずつ所有していたものです。
ところが、そのうち親族2名が「共有持分を持っていても仕方がない」と考え、不動産業者に持分を売却しました。その結果、
- 親族4名:各1/6(合計4/6)
- 不動産業者:2/6
という構成になりました。
業者は、依頼者を含む親族4名に対して「持分を売りませんか」と交渉してきたものの、金額面で折り合いがつかず、相談に至った―このような場面を想定してください。
2. 共有物分割訴訟で「換価分割」を求める
このように話し合いがまとまらない場合、共有物分割訴訟を提起することができます。
この訴訟は、いわゆる必要的共同訴訟の形になります。つまり、依頼者が訴える場合は、他の共有者全員を相手にして訴訟をする必要があります。
そして請求の内容は、端的に言うとこうです。
「この土地は競売にかけて売却し、得られた代金を持分割合に応じて分けてください」
共有物分割には、現物で分ける方法などもあり得ます。しかし今回の土地は、道路に接する間口が非常に狭い細長い土地でした。これを持分どおりに現物分割しようとすると、さらに細い“ひも状”の土地になり、現実的ではありません。
そのため、土地全体を売却して現金化し、それを分ける「換価分割」で進めることになります。
3. 訴訟(ステップ1)のスケジュール感(モデルケース)
このモデルケースでは、次のような流れで進んだ想定です。スムーズに進むと、だいたいこのくらいのテンポになります。
- 2023年10月30日:提訴
- 2023年12月25日:第1回期日(口頭弁論)
→裁判官が主張の整理・確認を行い、「現物分割は非現実的なので売却の方向で」という認識が概ね共有される
- 2024年2月6日:結審(裁判としてはここで終了)
- 2024年2月26日:判決
→内容は「換価分割」=土地を競売にかけ、代金を持分割合で分配せよ、という判断
なお、共有者の中に認知症で判断能力に問題がある方がいたり、海外在住で送達に時間がかかったりすると、第1回期日までにもっと時間がかかることもあります。また、「現物分割でなければだめだ」と強く争う当事者がいる場合は、主張立証の期間が必要になり、さらに長期化します。
4. 判決後も終わりではない(ステップ2:競売申立て)
重要なのは、換価分割の判決が出ても、それだけでは自動的に競売が進まないという点です。判決が確定したあと、次の手続として 競売(売却)の申立てが必要になります。
モデルケースでは以下の流れです。
- 2024年2月26日:判決
- 判決送達後、通常 2週間程度で確定
- 2024年4月11日:競売申立て(改めて裁判所へ申立て)
つまり、実務的には「裁判手続が二段階ある」というイメージです。
5. 競売手続の進行と、現金が分配されるまで
競売申立て後は、おおむね次のように進みます。
■2024年8月19日:入札実施(期間入札)
裁判所が「売却基準価額」などを定め、一般の人も入札参加できます
■2024年9月30日:開札期日
入札を開け、最高額の買受人が決定
■2024年11月27日:分配金交付
○売却代金から必要経費を控除し、残額を持分割合で分配
○例えば1/6持分なら、「(売却代金-経費)÷6」が依頼者に交付されるイメージです
6. 全体としては「スムーズでも約1年」かかる
このケースはかなりスムーズに進む想定ですが、それでも 提訴から分配金の受領まで概ね1年程度はかかります。共有者間での意見対立が強いほど、さらに時間を要することもあります。
7. 競売(換価分割)という選択肢の意味
本当は共有者全員で「一緒に売ろう」と合意できれば一番良いのですが、現実には価格の見立てが割れます。
たとえば一方は「3億円で売れる」と考えていても、他方は「そんな額では無理で2億円が限界」と考えていると、話し合いはまとまりません。
そうしたとき、競売でいったん客観的な形で売却し、現金を分けるという方法は、一つの割り切った解決策になり得ます。場所や状況によっては、競売を利用したことで結果的に高く売れ、当初提示されていた持分価格より大幅に高い金額が分配された例もあります。
共有不動産でお困りの事情がある場合は、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
以上が本日の内容です。
筆者プロフィール
弁護士 奥田 貫介
おくだ総合法律事務所 所長
司法修習50期 福岡県弁護士会所属
福岡県立修猷館高校卒
京都大学法学部卒
おくだ総合法律事務所
福岡市中央区大名2-4-19
福岡赤坂ビル601
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