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熟慮期間後に被相続人の債務が発覚!?相続放棄をあきらめないで

1 はじめにー相続放棄とタイムリミット

 今回は「相続放棄」というテーマでお話しいたします。

 

 相続放棄とは、相続人が”最初から相続人でなかったことにする”法的な手続です(民法938条〜)。

 ただ、相続放棄をするには、単なる宣誓や意思表示では足りず、家庭裁判所に申述しなければ成立しません。

 そして、この相続放棄には<タイムリミット>があります。 民法915条1項によれば、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」に相続放棄を申述しなければなりません。 この3ヶ月が、いわゆる「熟慮期間」というものです。

 

2 3ヶ月はあっという間!?起算点の考え方

⑴ 原則:死亡を知った日から3ヶ月

 熟慮期間は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から起算されます。具体的には、「被相続人の死亡事実を知ったとき」や「自己が相続人であることを認識したとき」から起算されます。

 ご家族として現に看取られたとか、ご遺族からの連絡、訃報記事、必要があって戸籍を取り寄せた時、こういったタイミングがスタートラインになりやすいように思います。

 

⑵ 3ヶ月以上経ったところで、被相続人の債務が発覚した!?

 一方、3ヶ月以上経ったところで初めて被相続人に債務があることが分かりました・・というケースも、ままあります。たとえば次のようなことは、よく起こりうるかと思います。

〈具体例〉

・相続開始後、被相続人が保証人であった事実を初めて知った場合

・死亡後しばらくして消費者金融やクレジットカード会社から督促状が届いた場合

・相続開始時には把握できなかった未納税金が後日に発覚した場合

 

 判例・実務上は、被相続人に財産が全くないと信じ、またそのように信じたことについて相当な理由があるといえる場合には、熟慮期間の起算点を「相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を知ったとき(または通常これを知り得たとき)」とすべきと解されています。

 「本当に財産ゼロだと思い込んで調べもしなかった」

 「しかも事情(たとえば長年会ってなかった、生活ぶりが分からなかったなど)で調査が難しかった」こんなときは、“実際に財産や債務の存在を初めて知った日”から、改めて3ヶ月の期間を数えましょう、という考え方です。

 要は、「いつから3ヶ月を数えるか」のスタートラインをちょっとズラしてあげましょう、という救済ルールです。「もう3ヶ月過ぎてる…どうしよう・・」と諦める前に、この例外を思い出してみてください。

 

3 時間が足りない!熟慮期間を伸ばす手続もあります

 相続財産の調査に時間がかかる場合には、「熟慮期間の伸長申立て」という制度があります(民法915条1項ただし書)。 家庭裁判所に申し立てることで、本来の3ヶ月を延長してもらえるのです。

 ただし、次の点にご注意ください。

 ・申立て自体は原則「相続開始3ヶ月以内」に行う必要があります。

 ・申立書には「調査に時間を要する理由」や「財産の不明確さ」を具体的に記載しなければなりません。

  調査(金融機関や債権者への問い合わせ等)と並行して申立てを準備し、余裕を持って手続きを進めることがポイントです。

 

4 知らぬうちに承認?単純承認の落とし穴

 次に押さえておきたいのが「法定単純承認」のリスクです(民法921条)。

 相続人が「相続財産の全部または一部を処分」すると、相続を承認したものとみなされて、相続放棄できなくなることになります。

 次のような行為が典型例です。

  (例)故人の不動産を売却/預金を引き出して使う/故人の借金を相続財産から弁済する

 

 これらは、故人のために厚意でしたことでも、相続放棄できなくなるリスクがあります。 実務では、特に葬儀費用など、身近な支出が問題になるケースが多いので要注意です。

 

5 おわりに―あきらめないで、まずは相談を

 以上、相続放棄の「熟慮期間」について解説しつつ、法定単純承認という留意事項についても少し説明させていただきました。

 相続放棄は、時間との勝負であると同時に、情報と判断の勝負でもあります。

  ・起算点の考え方

  ・伸長手続

  ・単純承認の回避

これらを正しくご理解いただき、できれば早めに専門家にご相談いただくことで、確実な相続放棄に向けて、準備と判断がしやすくなるかと思います。「もう遅いかも…」と思わずに、ぜひ相談されてください。

 

 今回もご覧いただきありがとうございました。

 

執筆者紹介

弁護士 井上瑛子(いのうえ はなこ)

九州大学法学部卒

九州大学法科大学院修了

福岡県弁護士会所属

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