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法定相続情報証明制度のススメ

1 はじめに

 この動画では、「法定相続情報証明制度」について、解説したいと思います。

2 法定相続情報証明制度とは

⑴ 法定相続情報証明制度

 法定相続情報証明制度とは、相続人が法務局(登記所)に必要な書類を提出し、登記官が内容を確認した上で、法定相続人が誰であるのかを一覧にして証明する制度です。

 

 もう少し簡単にいうと、相続関係図(法定相続情報一覧図)を作成して、そこに、民法上の相続関係と合致しているというお墨付きを法務局が与えることで、その相続関係図を有用な資料とする制度です。具体的には、相続関係図を、戸籍謄本の代わりに利用できるようになります。

 

<法定相続情報一覧図の完成イメージ(※見本)>

 

⑵ メリット・デメリット

◆ メリット

 ① 「戸籍謄本」を集める負担が軽くなる

 ② 「法定相続情報一覧図」は、5年間何度でも発行可能

 ③ 制度の利用は無料

 ④ 各相続手続を同時並行で進められる→時間短縮◎

 

◆ デメリット

  「法定相続情報一覧図」の作成が負担になる可能性

 

<メリット>

 一般的に、相続人が、亡くなった方(被相続人)の不動産や預金の相続手続を行う際、相続関係を証明する資料として、戸籍謄本を法務局や各銀行に提出する必要があります。

 

 実際に手続を行った方であればご存知かと思いますが、この戸籍謄本は、かなりの束になることがよくあります。というのも、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍一式を中心に、相続人が誰であるのかを辿っていくことになりますから、1度取り寄せた戸籍を見て、さらに今度は配偶者側の戸籍が必要だ、とか、きょうだい全員分の戸籍が必要だ、とか、複数辿っていかなければならないことも少なくありません。

 しかも、これらの戸籍がようやく揃ったかと思えば、その束の原本を、登記所や各銀行に1回1回提出する必要があります。同じ原本を何セットも用意するのも大変なので、通常の場合は、1度提出して、確認が取れたら返却してもらい、次の機関に提出する、ということを繰り返していくことになります。そのため、全ての相続手続が完了するまでに時間がかかってしまうのです。

 

 法定相続情報証明制度を利用して得られる「法定相続情報一覧図」は、このような戸籍謄本の代わりになるものです。この一覧図を1度作成しておくと、5年間は何度でも無料で交付を受けられるため、何度も戸籍を取ったり提出したりする労力をかなり軽減することができます。そのため、法務局や銀行での相続手続を、同時並行で進められるというメリットもあります。

 

 

(法務局HPより:https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001394035.pdf ) <デメリット>  一方で、後ほどご説明しますが、法定相続情報証明制度を利用する際は、戸籍謄本を1セット集め、これを読み解きながら「法定相続情報一覧図」を作成し、提出しなければなりません。これ自体が手間ではあります。

 

⑶ どのような場合にオススメか

 以上のメリット・デメリットをふまえると、この法定相続情報証明制度は、相続人または相続財産が“複数”ある場合は、特に利用していただきたい制度といえます。

 

 相続人が複数存在する場合は戸籍が多量になりやすく、相続財産(不動産・預貯金)が複数ある場合は戸籍の提出先が複数存在することになるため、この法定相続情報証明制度を利用されることを強くお勧めします。

 

 一方で、相続関係があまり多くないとか(相続人が配偶者とそのお子さんのみとなる場合等)、相続財産が預金1箇所だけとか、戸籍収集の手間が複雑でないような場合は、制度利用のための資料収集の方が手間になる可能性もあるため、この制度を利用するメリットはあまり感じられないかもしれません。

 

3 手続の流れ

⑴ 必要書類の収集

 この法定相続情報証明制度を利用するには、以下の書類等を集めて提出する必要があります。

※別途書類が必要となる場合もあります。

⑵ 法定相続情報一覧図の作成

 ⑴で収集した戸籍謄本をもとに、被相続人と法定相続人を一覧にした「法定相続情報一覧図」を作成します。

 この一覧図については、下記の法務局ホームページに、書式と記入例の案内がありますので、よろしければご確認ください。

 

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html

(法務局HP「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」より)

 

⑶ 申出書の記入・登記所へ申出

 申出書(様式は下記リンク参照)に必要事項を記入し、⑴で収集した書類と、⑵で作成した一覧図と一緒に、これらを管轄の登記所へ提出します。郵送での提出も可能です。

 

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html

(法務局HP「法定相続情報証明制度の具体的な手続について」より)

 

  ※申出をする登記所は、以下のいずれかを選択することが可能です。

   ・被相続人の本籍地(死亡時の本籍を指します。)

   ・被相続人の最後の住所地

   ・申出人の住所地

   ・被相続人名義の不動産の所在地

 

⑷ 法定相続情報一覧図の写しの発行・受領

4 弁護士に書類収集・申出手続を依頼することもできます

 以上の申出の手続は、弁護士、司法書士、税理士などの専門家に依頼することができます。

 

 これまで説明してきたとおり、この法定相続情報証明制度は、1度申出をしてしまえば、5年間は何度でも戸籍の束の代わりになる資料を発行できるという、とても便利なシステムです。

 ただ一方で、その1度の準備自体が大変にも感じられるところです。

 

 相続手続を楽に進めたいけれども、必要書類や書き方がよく分からない・揃える余裕がなかなかないという方は、この手続について、弁護士等に依頼することを是非ご検討ください。

 戸籍の取り寄せや、読み取り、一覧図の作成にも慣れているため、基本的にスムーズに手続を進めることが可能です。

 

5 おわりに

 以上、今回の動画では、

 

  ◆法定相続情報証明制度とは  →2.

  ◆手続の流れ         →3.

  ◆弁護士に書類収集・申出手続を依頼することもできます →4.

 

についてご説明しました。

 

 当事務所でも、実際に法定相続情報一覧図の申出手続を代理して行っています。さらにその一覧図を利用して相続手続に関与することもあるのですが、やはりこの制度はとても便利だなという印象をもっています。

 

 よろしければ、制度の利用と、もし難しいようでしたら弁護士等への依頼をご検討いただければと思います。

 

 今回もご覧いただきありがとうございました。

 

執筆者紹介

弁護士 井上瑛子(いのうえ はなこ)

九州大学法学部卒

九州大学法科大学院修了

福岡県弁護士会所属

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