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今回はまず、自筆証書遺言や保管制度の概要について簡単にご紹介したいと思います。
そのうえで、保管制度を利用して遺言者と相続人等がそれぞれできることについて、ご説明いたします。
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1.概要
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⑴ 自筆証書遺言とは
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自筆証書遺言とは、遺言者が、本文・氏名・日付の全てを自筆(つまり、自らの筆跡)で作成し、押印して作成する遺言書です。
2019年より、本文のうち財産目録については、パソコンで作成することができるようになりました。
自筆証書遺言の詳細や、公正証書遺言等の他の作成制度については、弊所のホームページや動画の中に、より詳しく解説しているものがいくつかございますので、そちらをご覧ください。
⑵ 保管制度創設のあらまし
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今しがた述べたとおり、自筆証書遺言は、厳格な形式要件さえ満たせば、遺言者ご自身で作成することができます。
そのため遺言書は、遺言者のご自宅で作成され、そのまま自宅で保管されることが多いです。
ところが、その後、作成した遺言書を紛失する可能性がありますし、遺言者としては、数年、十数年単位で遺言書を保管しなければならないということに、心のどこかで引っ掛かりというか、負担感が残り続ける場合もあります。
一方、実際にその方が亡くなったときに、残された相続人の方にとっては、遺言者がそもそも遺言書を作成しているのか、作成しているとして、どこに保管しているのか、分からない場合もあります。
また、いざ遺言書が見つかったとしても、ドラマ等でイメージしやすいところだと、相続人の誰かによって改ざんされていることも無くはありません。
そして何より、このように 遺言書が見つからなかったり、遺言書の内容に違和感を覚えたりするといった状況だけで、隠匿や改ざん等を疑い合ってしまう等の相続人同士のトラブルになりかねません。
こういったケースに対しては、“遺言者が家族に「遺言書を書いた」と伝えておけばいいだろう”、という考え方ももちろんあり得るところですが、そうすることが良いとは必ずしも言えません。
というのも、遺言書には、作成者の家族関係や財産状況、相続人への想いなど、極めてセンシティブなプライバシー情報がつまっています。ですので、自分が生きている間は、遺言書の存在や内容を家族に知られたくないという方もいらっしゃるわけです。
今回、保管制度が創設されたことで、遺言者のプライバシーを確保しつつ、自筆証書遺言の存在や内容の真正を公的に担保できるようになりました。
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⑶ 保管制度の概要
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左上の遺言者を中心に、矢印が2本伸びているのが分かります。
従来の自筆証書遺言は、そのうち上段の方法しか取り得ませんでした。つまり、自宅等で保管し、死亡後に検認手続を経るということになります。
(検認手続についても、弊所の他の記事や動画で解説をしておりますので、よろしければ御覧ください。)
今回の保管制度は下段の方法になります。遺言者が自筆証書遺言を作成し、各都道府県の法務局にある遺言書保管所に申請手続を行えば、そのまま遺言書の原本とデータを保管してくれます。
公的に保管してもらえる結果、紛失や改ざんのおそれもないので、検認も必要ありません。
また、後程ご紹介しますが、残された相続人側も、遺言者が亡くなった後に遺言書の存在や内容を確認することができます。
2.遺言者ができること
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⑴ 保管申請
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遺言者は、自身の住所地/本籍地/遺言者が所持する不動産の所在地 のいずれかで遺言書保管を申請することができます。
法務省によれば、保管申請の予約は、令和2年7月1日から受付開始予定です。
⑵ 閲覧請求
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モニターによる画像又は原本を閲覧することができます。
モニター画像は全国の保管所で閲覧可能ですが、原本は保管先の保管所でなければ閲覧できません。
⑶ 撤回
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保管申請を撤回、保管されている遺言書を返してもらうことが可能です。
⑷ 変更の届出
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遺言者の氏名・住所等に、保管申請時のものから変更が生じた場合は、その旨を届けなければなりません。
3.相続人等ができること
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相続人等は、遺言者が亡くなられた後に、以下の手続ができるようになります。
⑴ 証明書の請求
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全国の保管所で、各種証明書を請求することができます(窓口・送付いずれも可)。請求できる証明書には、以下の2種類があります。
① 遺言書保管事実証明書
自分(請求者)のことを、相続人/受遺者/遺言執行者等とするような遺言書が保管されていないか、確認することができます。
② 遺言書情報証明書
相続人等が、保管所に保管されている遺言書の内容を確認することができます。
ただし、相続人等の1人が交付を受けると、その方以外の相続人等に対しても、遺言書保管の旨が通知されることになります。相続人間の公平性を担保するためです。
⑵ 遺言書の閲覧
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モニターによる画像又は原本を閲覧することができます。
繰り返しますが、遺言者が亡くなった後でなければ、閲覧請求をすることはできません。また、遺言書情報証明書の交付と同様、相続人等が遺言書の閲覧をすると、その方以外の相続人等に対しても、遺言書保管の旨が通知されることになります。
4.遺言書の様式
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5.おわりに
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以上、自筆証書遺言の保管制度についてご説明いたしました。
1点ご留意いただきたいのは、今回法務局に創設された遺言書保管所は、あくまで保管にまつわる運用をしている場所であって、遺言書の作成や様式に関し、相談を受け付けるものではないということです。
こういった点に関しては、弁護士にご相談いただければと思います。
自筆証書遺言と保管制度の流れや、公正証書遺言等ほかの手続と比べてどれを選ぶかについても、弁護士にご相談いただければ、それぞれの手続内容やメリット・デメリットをご説明させていただきます。
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筆者プロフィール
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井上瑛子 弁護士
おくだ総合法律事務所
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属
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